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『ミッション:おっさんポッシブル』第13話 侵入者、現る!

ゴゴゴゴ……。

 

セーフハウスの扉が、外から何者かによってこじ開けられようとしていた。

 

「来たな……!」

 

片山は拳を握りしめ、ぐっと身構える。

 

P-01は素早く壁際の端末を操作し、部屋中に防御フィールドを展開した。

 

「初動戦闘準備完了。迎撃態勢に移行します」

 

「なあ大竹……俺ら、ほんまに戦うんか?」

 

「今さら引けるか。おっさんの意地、見せたろやないか」

 

バキィンッ!!

 

扉が破壊され、白煙が立ち込める中から黒ずくめの男たちがなだれ込んできた。

 

全員、顔には仮面。手には電磁バトンやスタンガン。

 

「うわっ、見た目からして悪いやつ確定やん」

 

「敵勢力確認、武装レベル:中程度」

 

P-01が冷静に告げると、右腕がガシャリと変形し、内蔵型のシールドが展開された。

 

「片山さん、大竹さん、私の後ろに」

 

「おおおっ、頼もしい」

 

シールドが電磁バトンの攻撃を受け止め、P-01は一人、男たちの間を縫うように動いた。

 

「機械ってこんなに強いんか?」

 

「感心してる場合ちゃう」

 

片山は拾ったパイプ椅子を振り回し、大竹も非常食の缶詰を投げて応戦した。

 

「くらえ、賞味期限ギリギリのツナ缶アターック!」

 

「なんで武器そんなんしかないねん!」

 

混戦の中、一人の仮面男が片山めがけて突進してきた。

 

「うおっ、やば、」

 

咄嗟にアタッシュケースを盾にした片山。

 

ガンッ!!

 

衝撃音とともに仮面男が吹き飛んだ。

 

「……これ、めっちゃ硬いやん」

 

「アタッシュケース、武器説!」

 

ようやく敵勢を制圧し、セーフハウス内に静けさが戻った。

 

床に倒れた仮面男たちを見下ろしながら、片山は息を切らせた。

 

「なあ、P-01……こいつら、どこの誰なんや?」

 

P-01は仮面男のポケットから小型の通信デバイスを回収し、即座に解析を始めた。

 

「判明しました。彼らは『ノア計画』の独立武装部隊“セラフ”所属。指揮命令系統は……内部幹部の一人、“アマギ”です」

 

「アマギ……? そいつが黒幕か?」

 

「現時点では、最有力候補です」

 

「なんか知らんけど…どんどん話でかなってへんか?」

 

「そもそも俺ら、ただの探偵やったのにな…」

 

片山と大竹は顔を見合わせ、大きなため息をついた。

 

だが、もう引き返せない。

 

「行くぞ大竹。300万のために始めたけど、ここまできたら最後までやったる!」

 

「せやな……俺ら、おっさんポッシブルやからな!」

 

新たな敵、“アマギ”を追うため、二人と一機の奇妙なバディは再び動き出した。

(続く)

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『ミッション:おっさんポッシブル』第12話 セーフハウスの真実

薄暗い廊下を駆け抜ける三人──いや、二人と一機。

 

P-01が先頭を走り、振り返りもせずに言った。

 

「この先にセーフハウスがあります。追跡ドローンと自動防衛システムは私が制御下に置きました」

 

「すごいな……スパイ映画の主人公やん」

 

「私は脇役です」

 

「ウケる気ゼロか?」

 

やがて、突き当たりに無機質な扉が現れた。P-01が指先を差し込むと、扉が静かに開いた。

 

中は、想像以上に整備された空間だった。防音パネル、医療キット、情報端末──そして大量の非常食。

 

「……よう準備しとるな」

 

「ここは元々、組織内部の工作員が使っていた退避拠点です。現在はMr.Xの管理下にあります」

 

「てか、そもそもその“秘密組織”ってなんやねん?オルフェウスって普通の会社ちゃうんか?」

 

「正式名称は『オルフェウス・テクノロジー表面部』です。本来の実態は軍事技術・認知操作・時間制御技術などの研究・開発を行う非公開機関『ノア計画』の一端」

 

「話が急にスケールでかすぎるやないかい」

 

「ペット探ししてた頃の俺ら返してくれ」

 

P-01は無表情のまま、情報端末を起動した。

 

「先ほどのアタッシュケースに収められていたデータは、“ノア計画”中枢の暗号化コードと予備アクセスキーです。これが奪われれば、計画そのものが一時凍結されます」

 

「じゃあ今俺ら、めっちゃ大事な鍵持ってるってこと?」

 

「その通りです」

 

片山はケースを見つめた。

 

「そんなん、300万どころの話やないで」

 

「え、逆に命狙われる側ちゃうん?」

 

その時、セーフハウス内の警報が点滅した。

 

【警告:セーフハウスのセキュリティが侵害されました】

 

「やばい!! バレたんか!?」

 

「おそらく、内部に裏切り者がいます」

 

「もうスパイ映画どころちゃうやん!マジもんの戦場やん!」

 

片山と大竹は顔を見合わせ、思わずため息をついた。

 

「こりゃもう腹くくるしかないな」

 

「せやな。探偵やめて、もうスパイ名乗ってええんちゃうか?」

 

「名刺刷り直すか」

 

P-01がふと口を挟んだ。

 

「名刺のデザインについては後ほど相談に応じます」

 

「そこは真面目なんかい!」

 

扉の外に、何かが迫っていた。

 

「準備は整えました。あとは、戦うだけです」

 

「分かった。やったるわい、おっさんの底力見せたる!」

 

「ほんまにこれ、“おっさんポッシブル”やな……」

(続く)

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『ミッション:おっさんポッシブル』第11話 覚醒するケースの正体!

「ちょっと待て片山、今、ケースが……」

大竹が震える声で指差す。

 

片山の手にある黒いアタッシュケースが、うっすらと光り始めていた。

 

「なんや、これ……」

 

ケースの側面に浮かび上がったのは、見たことのない幾何学模様。そして中央に浮かぶ数字のような記号。

 

【起動シーケンス:10…9…8…】

 

「おい、カウントダウン始まっとる!!」

 

「マジか! これ爆発すんのか!? それとも召喚系か!?」

 

「召喚系ってなんや!!」

 

慌てて手放そうとするが、ケースは片山の手にピタリと張り付いて離れない。

 

「うわっ! 離れへん!! 何これ、呪いのアイテムか!?」

 

【起動シーケンス:3…2…1】

 

「うわーー!!」

 

瞬間、ケースがまばゆい光を放ち、空間がぐにゃりと歪んだ。

 

「え……?」

 

光が収まったとき、そこにいたのは――

 

「……誰や、あんた?」

 

二人の目の前に立っていたのは、スーツ姿の男。 

無表情で、瞳は銀色に光っている。

 

「こちら、情報収集支援型ヒューマノイドユニット“P-01”。依頼者“Mr.X”の指令により、貴殿らに同行・支援を行う」

 

「ロボ!? 中からロボ出てきたんか? 小さな人が操縦してるんちゃうんか!?」

 

「私の機能に冗談検知モジュールは搭載されておりません」

 

「こわっ。 全然ウケへん」

 

大竹は若干引き気味に後ずさった。

 

「ちょっと待て。お前、Mr.Xの差し金か? なんの目的で?」

 

「機密データ奪取ミッションの補佐及び、敵対勢力への防衛行動。それが私の任務です」

 

「敵対勢力って……お前、この会社のこと“敵”って言ったな」

 

「正確には、“この施設を牛耳る秘密組織”が対象です」

 

「なんや、急に陰謀論感でてきたな……」

 

「時間がありません。追手が迫っています。現在位置から南廊下を抜けた先に、セーフハウスがあります」

 

片山と大竹は顔を見合わせた。

 

「……着いてくしかないか」

 

「ロボのくせに頼りになる気がしてきたわ」

 

「私には“信頼されるべき”というプロファイルが含まれています」

 

「なんやそれ、ムカつくわ」

 

P-01が先導し、二人は再び走り出す。

 

未だ謎に包まれた“Mr.X”、その目的、そして“おっさんポッシブル”最大の敵――“秘密組織”の正体とは!?

 

物語は、新たなステージへと突入する。

(続く)
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『ミッション:おっさんポッシブル』第10話

ガタン……ゴトン……。

 
エレベーターはきしむような音を立てながらゆっくりと下降を始めた。
 
「なあ片山……これ、ほんまに大丈夫なんか?」
 
「知らんけど、戻るよりマシやろ……あのロボ、絶対こっち来てたし」
 
大竹は額の汗をぬぐいながら、アタッシュケースを睨んだ。
 
「てか、この中身ほんまにUSBなんか? めっちゃ重いし……」
 
「さっきの警報の鳴り方、ただのデータやない気ぃするよな」
 
「……もしかして、爆弾とかちゃうやろな」
 
「やめろや。そういうのは考えたら負けや」
 
ゴトン、とエレベーターが停止した。
 
「地下……5階……?」
 
ドアがギィィ……とゆっくり開く。
 
そこは、異様に静かで暗いフロアだった。空気が重く、どこか生ぬるい。
 
「なんか……実験施設みたいやな」
 
「ここ、一般の社員立ち入り禁止ってレベルちゃうぞ」
 
二人はそろりとエレベーターから出た。
 
壁沿いに並ぶコンソール、ガラス越しに見える冷凍保存された謎の装置。そして巨大なサーバールーム。
 
「まさかこの会社、ほんまに軍事研究やっとるんちゃうやろな」
 
「うわっ、見てみぃ大竹。『Project: Prometheus』って書いてある」
 
「絶対ロクなもんちゃうでそれ」
 
その時、
 
「カタ……カタタ……」
 
低く、機械のようなノイズ混じりの音が鳴った。
 
「おい、今の聞こえたか?」
 
「聞こえた。聞こえたけど、聞こえたくなかった」
 
音のした方へ振り向くと、ガラスの向こう側に、何かが立っていた。
 
ヒトのようで、ヒトでない。 身長は2メートルを超えており、全身を銀色の外装で覆われている。 顔の部分には目らしき赤い光が左右に動いていた。
 
「うわああああ!! また出たあ!!」
 
「てか今度のロボ、さっきのよりでかないか?」
 
その瞬間、警報が再び鳴り響いた。
 
【侵入者確認。封鎖モード、起動します】
 
ガシャン! ガシャン!
 
通ってきたエレベーターの扉が、重々しい音を立てて完全にロックされた。
 
「出られへん!」
 
「くっそ……ほんまに袋のネズミや……」
 
ロボットがゆっくりと動き出す。
 
「なあ片山、このまま終わるんか、俺ら」
 
「アホか!おっさんはな、しぶといんや!」
 
片山はアタッシュケースをぐっと握りしめた。
 
「こいつがなんなのかは分からへんけど、ここまで来て手放すわけにはいかへんねや!」
 
「せやな……最後までやったろやないか!」
 
二人は背中合わせに立ち、迫り来るロボットに向き合う。
 
「おっさんポッシブル、第二章や!!」
(続く)

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『ミッション:おっさんポッシブル』第9話

おっさん、逃げ場なし!?

 

金庫室から飛び出した片山と大竹は、息を切らしながら非常階段を駆け上がっていた。

 

「こっちや! 非常口はこの先にあるはずや!」

 

「はず、て! お前、ちゃんと調べてきたんやろな!?」

 

「たぶん! ……いや、きっと!」

 

「全然信用ならん!」

 

背後からは警備員たちの足音が迫ってくる。

 

「止まれーっ!! 侵入者やー!!」

 

「うわー、これ撃たれるやつや!」

 

二人はなんとか地下3階の非常口にたどり着き、扉を押し開けた。
だが、そこにあったのは――

 

「……工事中?」

 

「なんでやねん!」

 

目の前には足場と鉄パイプ、そして封鎖された扉。

 

「どうする?どうする? 大竹、お前スパイ映画とかでこういう時どないするか知ってるやろ?」

 

「知らんし。 そもそも俺らスパイちゃうし」

 

片山はアタッシュケースを抱えたまま、くるりと踵を返した。

 

「もう戻るしかない。 逆走や!」

 

「また走るんかい!」

 

その瞬間、階段の上から警備員が現れた。

 

「発見! そこまでや!」

 

「やばい! 上も塞がれた!」

 

「なら下や!」

 

「え、下? 地下4階って書いてんで」

 

「行ったことない場所にはチャンスがある」

 

「なんの理論やねん」

 

強引に階段を下りる二人。
その先にあるのは未知のフロア――地下4階。通常社員は立ち入り禁止となっているエリアだ。

 

「おい……ここ、やけに静かやな」

 

「なあ大竹……なんか変な音聞こえへんか?」

 

「……ウィーン……カシャン……」

重機械のような音と共に、廊下の奥から何かが近づいてくる。

 

「まさか……」

 

姿を現したのは、全身がメタリックに光る人型のセキュリティロボットだった。

 

「うわあああああ!!!」

 

「なんでロボがおんねん!これ探偵の領分ちゃうやろ!」

 

ロボットが片手を上げると、指先からレーザーが発射された。

 

「よけろー!」

 

床に転がりながら、片山が叫ぶ。

 

「これ、ほんまに300万で割に合うミッションか?」

 

「いや……もう金やなくて意地や」

 

二人はロボットの攻撃をかい潜りながら、地下4階の奥へと逃げていく。

 

薄暗い廊下の突き当たり、古びたエレベーターの扉が見えた。

 

「アレしかない」

 

「動くか分からへんぞ」

 

「押すしかない」

 

ボタンを連打する片山。

 

……ギギィィィィィ……

 

扉が開きかけた瞬間、ロボットが目の前に迫る。

 

「今や! 大竹!」

 

二人はほぼ同時に飛び込んだ。

 

エレベーターの扉がギリギリのタイミングで閉まり、ロボットのレーザーがその外壁をかすめた。

 

「……セーフ!」

 

「……まだ、生きとる……」

 

二人はエレベーターの中でへたり込み、深く息を吐いた。

 

だが、

 

「なあ片山……このエレベーター、どこに行くんや……?」

 

「……知らん」

 

「おい!」

(続く)

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『ミッション:おっさんポッシブル』第8話

金庫の扉を開けろ!

廊下の突き当たりに現れたのは、分厚い鉄製の金庫室の扉だった。 

異様なまでに厳重なロックが施され、天井からは赤いレーザーが無数に張り巡らされている。

 

「これが……ターゲットの金庫か」

 

片山はごくりと唾を飲み込んだ。

 

「すごいな……セキュリティの宝石箱やー」

 

「褒めてる場合ちゃうやろ」

 

大竹は眉間にしわを寄せ、周囲を警戒した。

 

「先ず、指紋認証。次に暗証コードやったな」

 

「せや。どっちも突破できるよう、準備はしてきた」

 

片山が胸ポケットから取り出したのは、社長がよく通うカフェで入手したという紙コップ。

 

「まさか……」

 

「ここに社長の指紋がついとった」

 

「マジか。ほんまにペラペラの紙コップに未来が詰まっとるとは……」

 

片山は小型の指紋複製キットを取り出し、精密な動作で指紋の型を読み込ませた。

 

装置を金庫の指紋パネルに押し当てる。

 

【ピッ……認証完了】

 

「よし、いけた!」

 

「次は暗証コードや……せやけど、ヒントは社長室にあるんやろ?」

 

「いや、それがな……実はSNSで社長秘書の投稿を見ててな」

 

「またそれか」

 

「昨日の投稿で“社長の誕生日ケーキ”の写真が上がってた。ローソクの数、48本」

 

「つまり、コードは……」

 

「『1975』や!」

 

片山が素早くテンキーに数字を入力する。

 

【ピピッ……アクセス許可】

 

「開いた!!」

 

重々しい音と共に金庫の扉がゆっくりと開いていく。 

中から現れたのは、黒いアタッシュケース。中央に赤いラベルで「TOP SECRET」とだけ書かれている。

 

「これが……ミッションのブツか」

 

「はよ取れ。 警備が来るで」

 

片山がケースを手にした瞬間――

 

【警報作動】

 

「な、なんでや? 指紋もコードも突破したやろ」

 

「センサーか? 重量か? なんかミスったんやろ」

 

「うわあああああ!」

 

警報が鳴り響く中、廊下の奥から警備員たちの怒号が響いてくる。

 

「逃げるぞ大竹! 非常口はこっや!」

 

「ほんまにええんか? あのアタッシュ、爆弾ちゃうやろな?」

 

「知らん! でも300万や!」

 

二人は再び走り出す。

 

おっさん探偵たちの逃走劇が始まった――!

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『ミッション:おっさんポッシブル』第7話

「ほな行くでぇ!」

 

片山が意気揚々声を上げる。

 

大竹はため息をつきながら、ぎこちなく警備員の制服を整えた。知り合いのコスプレマニアが用意したという制服は、確かに本物そっくりだったが、ほんの少しサイズが合っていない。腕まくりをしても、袖が妙に短い。

 

「これ、ほんまに大丈夫なんか?」

 

「何言うてんねん。バッチリやんけ。 それっぽく歩けばええねん」

 

片山は胸を張るが、大竹は不安を拭えない。

 

二人はオルフェウス・テクノロジー社の社員入り口に向かった。

 

「先ずは正面突破や」

 

「普通に言うなよ。 正面突破ってバレたら終わりやろ」

 

「大丈夫や。警備員は俺らと同じ制服やし、適当に紛れ込めば問題ない」

 

片山はすました顔で社員証リーダーの前に立ち、偽物のIDカードをかざした。

 

……ピッ。

「おっ、通った!」

 

「嘘やろ……?」

あっさりとゲートが開いた。

 

「見たか大竹。 これがハッカーの力や」

 

「お前の知り合い、ほんまにヤバい奴なんちゃうか?」

 

不安を抱えつつも、大竹は片山に続いて建物の中へ入った。

 

目的地:地下3階

エレベーターで地下3階へ向かう二人。

 

「なあ、ほんまに大丈夫なんか?」

 

「大丈夫や。俺らは警備員やから、多少怪しまれても問題ない」

 

「それが問題やろ」

 

エレベーターが「チン」と鳴り、地下3階に到着した。

 

廊下には無数の監視カメラが並び、奥には二人の警備員が雑談をしていた。

 

「こっからが本番やでぇ」

 

片山はそう言って、自信満々に廊下を進み出した。

 

「おいおいおい、どうすんねん」

 

大竹が慌てて着いていく。

 

「お疲れ様でーす」

 

片山が大きな声で挨拶すると、警備員二人がこちらを振り向いた。

 

「お疲れっす。ん…? え…?新顔か?」

 

「あ、はい! 今日から夜勤シフトになりました」

 

「ふーん、そうなんや。大変やな」

 

「いやぁ、初日なんでドキドキしてますよ」

 

片山は適当に笑いながら、警備員の横を通り過ぎようとする。

 

「そういや君らの上司の田中さん、今日休みだっけ?」

 

「えっ……?」

 

大竹が固まる。

 

やばい。

 

知らない名前が出てきた。

 

「ええ、そうなんすよ。 田中さん、風邪で休みなんすよ」

 

片山が即座に返す。

 

「マジか。アイツ、最近疲れてたからなあ」

 

警備員たちは納得した様子だった。

 

「よし、いける」

 

片山は心の中でガッツポーズを決め、慎重に足を進めた。

 

果たして、このまま金庫に辿り着けることができるのか……!?

(続く)

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『ミッション:おっさんポッシブル』第6話

非常階段を駆け下りる二人。背後からは警備員たちの怒号が響く。

 

「お前、どこまで行くつもりやねん!」

 

「地下3階や! あっこに例の金庫があるんやろ?」

 

「それはそやけど、このまま行ったら袋のネズミやぞ!」

 

「だからこそ一か八かの作戦や!」

 

片山は階段を飛び降りるように進み、大竹も仕方なくその後を追った。ようやく地下3階へ辿り着くと、目の前には巨大な金庫室の扉がそびえ立っていた。

 

「おい、暗証番号は…?」

 

「いや、知らん」

 

「はあ!? ほなどうすんねん」

 

「落ち着け大竹。こういうときのために、用意したもんがあんねん」

 

片山はポケットから小さな機械を取り出した。

 

「……何や、それ?」

 

「最新鋭の電子ロック解除ツールや」

 

「え…?そんなもん、どこで手に入れたんや」

 

「ネットや」

 

「アホかお前、ほんまにそんなもんが使えるんか?」

 

「信じろ。俺らはおっさんポッシブルや」

 

「全然説得力ないねん」

 

片山がツールを金庫の端末に取り付けると、デジタル画面が点滅し始めた。

 

【認証シーケンス開始……】

 

「よし、いける!」

 

「ほんまか?」

 

そのとき、背後から警備員たちの足音が聞こえてきた。

 

「あっ、いたぞ!逃がすな!」

 

「くそっ、間に合うかぁ?」

 

【認証成功……ロック解除】

 

「開いた!」

 

「よし、中に入るで」

 

二人は急いで金庫室に駆け込むと、そこには――

 

「うわあ、何やこれ?」

 

大量の金塊、機密文書、そして不気味な黒いアタッシュケース。

 

「ヤバいもん、見つけてもうたんちゃうん?」

 

「どないする?持っていくか?」

 

「アホか。 こんなん持って逃げられるか」

 

警備員たちの足音が近づいてくる。時間がない。

 

「片山、隠れるで!」

 

二人はとっさに大きな棚の裏へ身を潜めた。

 

扉が開き、警備員たちがなだれ込む。

 

「ん……?いない……? どこへ消えた?」

 

「警報を鳴らせ! 出口を封鎖するんや!」

 

「まずいな……」

 

「大竹、ここからが本番やで」

 

「え…?お前まさか……」

 

「突破するしかないやろ!」

 

二人は顔を見合わせ、大きく頷いた。

 

「いくぞ! ミッション:おっさんポッシブル!

(続く)

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『ミッション:おっさんポッシブル』第5話

「ほ、ほんまにやるんか……?」

 
大竹はビルの影に身を潜めながら、深いため息をついた。
目の前にはオルフェウス・テクノロジー社の巨大な本社ビル。
最新鋭のセキュリティが施された“要塞”のような建物だ。
 
「ビビるな大竹。もう後には引かれへんぞ」
 
片山は警備員の制服をピシッと整え、胸を張った。
まるで本物の警備員のように堂々としているが、よく見ると胸元の名札には “カタヤマ ヒロキ” と思いっきり本名が書かれている。
 
「おい、お前……なんで名札そのままやねん」
 
「えっ!?バレへんやろ、これぐらい」
 
「いや、バレるに決まってるやん」
 
「大丈夫やって。それよりお前の方が問題やろ」
 
片山は大竹の方を指差した。
確かに、大竹の制服はズボンが微妙に短く、裾からくるぶしがチラチラ見えている。
 
「……なんか、サイズ合ってへん気がする」
 
「そらそやろ、古着屋で適当に買ったもんやし」
 
「お前、知り合いのコスプレマニアに頼むんちゃうかったんか?」
 
「…予算オーバーやった」
 
「ほんまに大丈夫なんか?この作戦……」
 
不安しかない状況のまま、二人はエントランスへ向かった。
 
ーーー 
 
潜入開始! 
 

「よし、自然に振る舞えよ」
 

片山は胸を張り、警備員らしく歩きながら、正面入り口のゲートへ向かった。  

 

ビルのロビーには、正規の警備員が二人ほど巡回している。 
 

「おい、普通に入れるんか?」 
 

大竹が小声で尋ねると、片山はニヤリと笑った。 
 

「大丈夫。事前に調べてあんねん。この時間帯は夜勤交代のタイミングや」 
 

「だからって、こんな適当な変装で通れるんか?」 
 

「まあ見とけって」 
 

片山はそのまま堂々とゲートを通過しようとした。 
 

ピンポーン! 
  

突然ゲートが赤く光った。 

 

「え?え?え?なんや?」 
 

「お客様、IDカードをお願いします」 

 

受付の女性が笑顔で声をかけてきた。 
 

「IDカード?」 
 

片山の顔が一瞬で固まる。 

 

「おい、IDカードのことなんか聞いてへんぞ」 
 

大竹が小声でツッコむが、片山は無理やり笑顔を作る。 
 

「え、えーっと……実は、IDカードを忘れてしまって……」 

 

「そうですか。では、お名前と所属をお願いします」 

 

「んーっ、と……」 

 

片山は焦ったが、すぐにホワイトボードに書いた内容を思い出した。 
 

「**オルフェウス警備チーム、第3分隊の……カタヤマ・ヒロキです」 

 

「…本名やんけ!」 

 

大竹が心の中で叫ぶ。 

 

受付の女性は一瞬、不審そうな顔をしたが、すぐにPCで何かを調べ始めた。 
 

「カタヤマさんですね……すみません、名簿には載っていませんが?」 

 

「え?」 
 

「え?」 
 

二人の間に気まずい沈黙が流れた。 

 

「ちょっとお待ちください。確認いたしますので、こちらで待機を――」 

 

「逃げろ大竹!」 
 

片山は叫ぶと、いきなりダッシュした。 
 

「うわっ!マジかおい!」 

 

大竹も仕方なく後を追い、二人はそのままロビーの奥へと駆け出した。 

 

ーーー
 

緊急プランB発動! 
 

「待てーっ!」 
 

警備員たちが一斉に動き出す。 
 

「アホかお前、計画めちゃくちゃやんけ」 

 

「しゃーないやろ、バレたら終わりや!」 
 

「もうバレとるわ!」 

 

二人はビルの奥へと走りながら、非常階段を目指した。 
 

「このまま地下3階に突入や」 
 

「ほんまにいけるんか?」 

 

「俺を信じろ大竹。俺らはおっさんポッシブルや」 

 

「何を言うとんねん」 
 

果たして二人は、無事にミッションを遂行できるのか――!?
(続く)
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『ミッション:おっさんポッシブル』 第4話

作戦会議開始!
 
「ほんまにやるんか?」
 
大竹浩司は、スポーツ新聞を折りたたみ、深いため息をついた。
目の前では片山弘樹がホワイトボードに大きく「300万」と書き、満面の笑みを浮かべている。
 
「考えてみろ大竹。成功すれば俺たちは一気に金持ちや!スナックでボトルキープし放題!」
 
「失敗したら?」
 
「まあそんときは……まあなんとかなるやろ」
 
「その“なんとか”が一番怖いねん!」
 
大竹は頭を抱えた。そもそも彼らは探偵であって、犯罪者ではない。
ペット探しと浮気調査ばかりの探偵事務所が、いきなり大企業の金庫破りに挑むなんて、どう考えても無謀だ。
 
しかし、目の前の片山はすでにノリノリだった。
 
「先ず、ターゲットはオルフェウス・テクノロジー社。本社ビルの地下3階にある金庫からUSBメモリを回収する」
 
「はいはい、そんなんメールに書いてあったな」
 
「問題は警備や。セキュリティは最高レベル。指紋認証、暗証コード、監視カメラ、警備員……盛りだくさんや!」
 
片山はホワイトボードに「警備の問題点」と書き、さらに項目を追加していった。
 
1. 指紋認証 → どうやって突破する?
2. 暗証コード → 社長室にヒント?
3. 監視カメラ → どう誤魔化す?
4. 夜間警備員(2名) → 戦う? 隠れる?
 
「……これ、無理ゲーやないか?」
 
大竹は頭をかきながら、片山をじっと見つめた。
 
「お前…本気でやるつもり?」
 
「当たり前やろ!300万やぞ」
 
「いや、そんな簡単に言うけどさ…」
 
「いいか大竹。俺たちの探偵事務所、経営難やろ?」
 
「それはまあ、認める」
 
「このままやと、俺ら来月の家賃も払われへんねんで」
 
「そやなあ」
 
「しかもお前の財布の中身、今いくらや?」
 
「……580円」
 
「な?」
 
片山はニヤリと笑い、ホワイトボードをバンッと叩いた。
 
「やるしかないねん!」
 
大竹は大きくため息をついた。正直無謀すぎるミッションだ。しかし目の前の現実も厳しい。
 
「……作戦があるなら聞こか」
 
「ああ」
 
片山は得意げに指を鳴らし、ホワイトボードの前に立った。
 
「作戦名:おっさんポッシブル・オペレーション!」
 
「なんやそのネーミングセンス」
 
「先ずは潜入方法や」
 
片山はボードに大きく「潜入方法:変装」と書いた。
 
「俺ら警備員に変装する」
 
「えっ、そんなん簡単にバレるで」
 
「そこは大丈夫や。知り合いのコスプレマニアに頼んで、本物そっくりの制服を用意する」
 
「何でそんなコネあんねん」
 
「次に指紋認証や」
 
片山はボードに「指紋対策:複製」と書き、得意げに続けた。
 
「社長の指紋を手に入れればいい」
 
「どうやって?」
 
「社長がよく行くカフェで、使ったコーヒーカップをゲットする」
 
「ストーカーやん」
 
「 探偵や」
 
「うさんくささは紙一重やな…」
 
「で、暗証コードや」
 
片山はボードに「暗証コード:社長室」と書き、続けた。
 
「メールには“ヒントが社長室にある”って書いてた。だから俺が社長室に潜入して探る」
 
「お前、そんな簡単に入れる思うてんの?」
 
「大丈夫や。俺、社長秘書のSNSフォローしてるから動向はバッチリやねん」
 
「なんでそんなコネあんねん…(二回目)」
 
「で、最後にカメラ対策!」
 
片山はボードに「カメラ対策:ハッキング」と書いた。
 
「……ハッキング?」
 
「知り合いの天才ハッカーに頼む」
 
「お前ほんまかあ?ほんまにそんな知り合いおるんかあ?」
 
「おる!」
 
「……嘘やろ」
 
「まぁちょっと、怪しい奴やけど、腕は確かや」
 
「そうなん…」
 
「よし大竹! これで作戦は完璧や」
 
片山は満面の笑みを浮かべ、拳を握りしめた。
 
「いよいよ俺たちの“ミッション”が始まる」
 
「……ほんま大丈夫なんか?」
 
「任せろ!」
 
こうしておっさん二人の無謀なミッションが動き出すこととなった――。
(続く)

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喜劇団R・プロジェクト6月公演
『ミッション:おっさんポッシブル 〜VS覆面ブラザーズ〜』
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