*『ミッション:おっさんポッシブル』のスピンオフ小説です。(3話完結)
某日、某秘密組織「ノア計画」の地下施設にて。
青白い蛍光灯が照らす無機質な廊下を、黒いスーツに黒いマスクの二人組が歩いていた。背の高い方がシグマ、がっしり体型の方がデルタ。かつて“おっさんポッシブル”と熾烈な戦いを繰り広げた、あの“覆面ブラザーズ”である。
「なあ兄ちゃん……これ、ほんまに出るんか?俺らに“有給”とか」
デルタが不安げに囁く。
「黙って歩け。監視カメラがある。笑顔も見せるな」
シグマは小声で答えるが、口元がやや緩んでいる。
そう、彼らは今、“休暇申請書”を持って、直属上司の元へ向かっていた。
地下7階の“幹部階”に到着すると、自動ドアが開いた。
「入れ」
中にいたのは、組織の副幹部・グレイ参謀。顔の半分が義眼、椅子の肘掛けにはなぜか猫。機嫌は悪そうだった。
「なんやお前ら、また任務の追加か?」
「いえ、本日はその逆でして……」
シグマが懐から申請書を差し出す。
『特別任務消化に伴う調整休暇・二日間』
グレイ参謀が義眼をぎょろりと光らせる。
「なんやこれは。お前ら仕事に燃えてたんちゃうんか?」
「はい。しかし、陽子という女と戦った結果、学びました」
「人生には、休息も必要やと」
デルタが堂々と言い放つ。
グレイはしばらく沈黙したが、やがてフッと笑った。
「……ええやろ。任務中の功績も認める。だが、目立つな。覆面は外すな」
「ありがとうございます、参謀!」
「では、我々いったん失礼します!」
頭を下げると、二人はそそくさと退室した。
エレベーターのドアが閉まった途端──
「兄ちゃん! ほんまに通ったで!!」
「当然や。俺らは働きすぎやってんから」
「で、どこ行く!? スパ銭!? 串カツ!? それとも道頓堀でタコ焼き食べ歩き!?」
「どれもええなあ。せやけど、まずは──スナック陽子や」
「結局そこかーーーい!!」
二人の覆面男は、そのままエレベーターに乗って地下から地上へ。組織に追われるでもなく、追うでもなく──
悪のエージェント、束の間の休暇…始まる。
(続く)
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喜劇団R・プロジェクト6月公演(公演直前!6/8やで!)
『ミッション:おっさんポッシブル 〜VS覆面ブラザーズ〜』
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