道頓堀。ネオンがきらめき、観光客と地元民が入り混じる夜の喧騒のなか、片山たちは目的の倉庫を目指して歩いていた。
「しかし道頓堀に倉庫って……だいぶ場違いな感じやな」
「普通はたこ焼きかグリコやもんな」
「倉庫の下に、まさか陽子姐さんの何かがあるとはな……」
P-01が手元の端末を操作しながら言った。
「GPS座標一致。ここです」
一行は古びたシャッターの前で立ち止まった。
片山が、通天閣で手に入れた鍵を差し込む。
ガチャン。
シャッターがゆっくり上がると、中は意外にも整備された空間だった。 清掃は行き届き、照明も生きている。床にはカーペット。壁には額縁入りのポスター。
「え?…これ、倉庫ちゃうやん」
「完全にスナックやん」
その名も──“スナックY2”
「陽子、また増やしてたんか…?」
大竹が呆れながらカウンターへ向かう。 カウンターには手書きのメモと、USBメモリが置かれていた。
『よう来たな、オッサン探偵ら。最後のピースはここにある。このUSBには“あんたらの知らん陽子”が入っとる。この先、見るか見んかは自由やけど──見たら戻られへんで。 YOKO』
「……見るしかないやろ」
片山がUSBを差し込み、モニターを起動。
再生された映像には、若かりし陽子が写っていた。
「私は“情報屋”としてこの街で生きてきた。男に騙され、組織に使われ、でも……最後に笑うんは、あたしやって決めてたんよ」
次の瞬間、映像が切り替わった。
そこには、陽子が覆面ブラザーズの父親らしき男と、オルフェウス・テクノロジー社の重役たちとともに写る密会映像。
「……これ、完全に機密情報やん」
「このUSB、渡したらアマギ……終わりちゃうか?」
「せやけど、敵も黙ってへんやろな」
P-01が映像を確認しながら言った。
「この映像は、ノア計画の闇を証明する証拠です。公表すれば、組織の根幹が崩壊する可能性があります」
ユウスケとケンジが、目を見交わした。
「母さん…こんなもん、隠してたんか…」
「俺たちの知ってる陽子は、ほんの一面やったんやな」
「で、片山…どうする?」
片山はしばらく考え、静かに答えた。
「俺ら探偵や。真実を見つけたら、それを放っとくわけにはいかん」
「せやな…陽子姐さんが、どんな形で生きたとしても…最後まで見届けよ」
その瞬間、店内の電話が鳴り響いた。
片山が受話器を取る。
「──ようやったな、オッサンら」
聞こえてきたのは、あの声。
「陽子姐さん……」
「それ持って、あんたら、最後の舞台へ行きや。場所は……“空中庭園”や」
「うわ、また高いとこ来た!」
「ええか? 最後は命がけや。舐めたらあかんよ」
「もちろん。俺ら、おっさんポッシブルやからな」
受話器を置いた片山の顔には、覚悟が宿っていた。
(続く)
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喜劇団R・プロジェクト6月公演
『ミッション:おっさんポッシブル 〜VS覆面ブラザーズ〜』
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