夜の通天閣。 ネオンがぼんやりと輝くなか、観光客の姿はまばらだった。
片山、大竹、そして覆面ブラザーズを加えた四人は、ビリケンさんの足元に集まっていた。
「……ここが、次の手がかりの場所か」
「通天閣の“地下”って、観光ガイドにも載ってへんけどな」
「ほんまにこんなとこに秘密基地があるんかいな」
大竹が不安げに周囲を見渡す。
「いや、ある」
ユウスケ(赤覆面)が小さく呟いた。
「俺ら、子どもの頃……母さんに連れて来られたことがある」
「え? 通天閣に?」
「いや、正確にはその下や。なんか……古い階段を降りて行った記憶がある」
「お前らの母ちゃん、スナック経営しながら秘密組織作ってたんか?」
P-01が静かに足元の排水口に近づいた。
「ここの金属プレート、構造が不自然です」
カチッ。
排水口の蓋が、機械のように回転し、地下へと続く階段が現れた。
「ほんまにあったんかい!」
「ほな、行くか」
暗く狭い階段を、全員が慎重に降りていく。
その先にあったのは、地下には不釣り合いなほどモダンな空間。 ライティング、空調、床の艶……どれもが異様に整っている。
「ここ、スナックちゃうよな?」
「いや、これは“陽子ラウンジ”の跡地や」
青覆面――ケンジがぽつりと言った。
「母さんが昔、VIP専用でやってた店…」
「うわ、陽子姐さん、やっぱただもんやないな」
部屋の中央には、またしても黒いアタッシュケース。 その上に、手紙と小さな鍵が置かれていた。
片山が手紙を開いた。
『あんたら、ようここまで来たな。ほんまにええ根性しとるわ。けど、まだ終わりやない。そこのケースの中、次のステージに進むカギを入れといた。“陽子伝説”はまだまだ続く。せやから覚悟してや。
愛をこめて YOKO』
「……いや、手紙までドラマチックすぎん?」
P-01がアタッシュケースを開け、鍵を取り出した。
「これは……古いタイプのシャッター用キー。大阪・道頓堀地区の“某倉庫”と一致します」
「また移動か……」
大竹がため息をつくと、片山が肩を叩いた。
「ええやないか。こうなったら、陽子姐さんの全貌を最後まで見届けたろやないか」
「せやな……ここまで来たら、もう気になるやん」
ユウスケとケンジも頷いた。
「おっさん探偵と、覆面兄弟と、ロボが一緒に行動するとか……普通の人生じゃ起こらんことやしな」
P-01が静かに言った。
「人生とは、予測不能なデータ群の連続です」
「……なんか、ちょっとええこと言われた気がする」
こうして一行は、次なる目的地――“道頓堀の倉庫”へと向かう。
(続く)
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喜劇団R・プロジェクト6月公演
『ミッション:おっさんポッシブル 〜VS覆面ブラザーズ〜』
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