地下3階 金庫室の手前にて
「……やっと、ここまで来たな」
大竹は汗だくの額をぬぐい、深く息を吐いた。これまでにすでに3つのセキュリティを突破してきた。指紋もコードもカメラも。だが、最後の扉の前で立ちはだかる存在があった。
赤と青の覆面をかぶった、二人組の男たち。
「待っていたぞ、探偵コンビ……いや、”おっさんポッシブル”!」
赤の覆面が言った。筋肉質で背が高く、まるでプロレスラーのような体つき。
「我ら覆面ブラザーズが、お前らのミッションを終わらせる!」
青の覆面も言う。細身だが素早そうで、目だけがギラリと光っている。
「な、なんやこいつら……!? ほんまに覆面かぶってるし!」
「さすがに想定外や……って、いや、ちょっとカッコよすぎへん!?」
片山は突っ込みながらも、腰が引けていた。
「これがラスボスか……」
「ちゃうちゃう、ゲームちゃうし!」
赤覆面が静かに構える。
「行くぞ……”おっさん”ども!」
次の瞬間――青覆面が疾風のように飛び出した!
「うおおおっ!?」
大竹は紙一重でその蹴りを避け、床を転がる。
「ちょ、マジで格闘スキル高いやんけ!!」
一方、片山は赤覆面に捕まれ、頭をゴリゴリと締め上げられていた。
「ぐえぇぇえ!首、首やばい!!」
「これが……300万の重みかッ!!」
「何でそんな名言ぽいこと言うねん!」
しかし、ここで片山のズボンのポケットから一つのアイテムが転がり出た。
「ん?これは……?」
赤覆面が手に取る。
それは、「スナック陽子」のボトルキープカードだった。
「陽子……?」
その名前に、赤覆面の手が止まった。
「ま、まさか……”陽子”って、鶴橋の陽子か!?」
片山が首を押さえながら答えた。
「そや!週一で通ってんねん。 何か文句あるんか」
すると――
赤覆面は覆面を外した。
「……兄弟、それは俺たちの母さんや」
「な、なんやってぇぇえ!?」
思わず叫ぶ大竹。
「つまり……お前ら、陽子の息子?」
「そうだ。俺たちは、母さんが男に騙されてばかりなのを見て育った……」
「だから、おっさんを許せんのや」
青覆面も覆面を脱ぎ、涙ぐんでいた。
「……誤解やで。陽子さんには、ボトル代ちゃんと払ってるし、カラオケもデュエットしかしてへん」
「ほ、ほんまか?」
「ほんまや」
その言葉に、二人は互いに顔を見合わせた。そして――
「……通れ。おっさんポッシブル」
「陽子に悪い虫をつけへん限り、オレらは見逃す」
道が、開かれた。
「……え、ええんか?」
「ただし!」
赤覆面が続けた。
「金庫を開けるまでは手伝わんが、開けたら中身を俺らに見せろ」
「そうしないと、信用できんひんからな」
「……まぁ、それくらいええやろ」
片山は苦笑しながら言った。
「おっさんやけど、約束は守るタイプや」
金庫のパネルに最後のコードを入力する。
ウィィィィィ……
金庫が、静かに開いた。
中には――
「USBメモリ……1本だけか?」
「いや、何か書いてあるな……『機密ファイル:陽子伝説』……?」
一同:「はあああああああああ!?」
(続く)
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喜劇団R・プロジェクト6月公演
『ミッション:おっさんポッシブル 〜VS覆面ブラザーズ〜』
公演ではこの物語がどう展開するのか!?
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