薄暗い廊下を駆け抜ける三人──いや、二人と一機。
P-01が先頭を走り、振り返りもせずに言った。
「この先にセーフハウスがあります。追跡ドローンと自動防衛システムは私が制御下に置きました」
「すごいな……スパイ映画の主人公やん」
「私は脇役です」
「ウケる気ゼロか?」
やがて、突き当たりに無機質な扉が現れた。P-01が指先を差し込むと、扉が静かに開いた。
中は、想像以上に整備された空間だった。防音パネル、医療キット、情報端末──そして大量の非常食。
「……よう準備しとるな」
「ここは元々、組織内部の工作員が使っていた退避拠点です。現在はMr.Xの管理下にあります」
「てか、そもそもその“秘密組織”ってなんやねん?オルフェウスって普通の会社ちゃうんか?」
「正式名称は『オルフェウス・テクノロジー表面部』です。本来の実態は軍事技術・認知操作・時間制御技術などの研究・開発を行う非公開機関『ノア計画』の一端」
「話が急にスケールでかすぎるやないかい」
「ペット探ししてた頃の俺ら返してくれ」
P-01は無表情のまま、情報端末を起動した。
「先ほどのアタッシュケースに収められていたデータは、“ノア計画”中枢の暗号化コードと予備アクセスキーです。これが奪われれば、計画そのものが一時凍結されます」
「じゃあ今俺ら、めっちゃ大事な鍵持ってるってこと?」
「その通りです」
片山はケースを見つめた。
「そんなん、300万どころの話やないで」
「え、逆に命狙われる側ちゃうん?」
その時、セーフハウス内の警報が点滅した。
【警告:セーフハウスのセキュリティが侵害されました】
「やばい!! バレたんか!?」
「おそらく、内部に裏切り者がいます」
「もうスパイ映画どころちゃうやん!マジもんの戦場やん!」
片山と大竹は顔を見合わせ、思わずため息をついた。
「こりゃもう腹くくるしかないな」
「せやな。探偵やめて、もうスパイ名乗ってええんちゃうか?」
「名刺刷り直すか」
P-01がふと口を挟んだ。
「名刺のデザインについては後ほど相談に応じます」
「そこは真面目なんかい!」
扉の外に、何かが迫っていた。
「準備は整えました。あとは、戦うだけです」
「分かった。やったるわい、おっさんの底力見せたる!」
「ほんまにこれ、“おっさんポッシブル”やな……」
(続く)
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喜劇団R・プロジェクト6月公演
『ミッション:おっさんポッシブル 〜VS覆面ブラザーズ〜』
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