『ミッション:おっさんポッシブル』第10話

ガタン……ゴトン……。

 
エレベーターはきしむような音を立てながらゆっくりと下降を始めた。
 
「なあ片山……これ、ほんまに大丈夫なんか?」
 
「知らんけど、戻るよりマシやろ……あのロボ、絶対こっち来てたし」
 
大竹は額の汗をぬぐいながら、アタッシュケースを睨んだ。
 
「てか、この中身ほんまにUSBなんか? めっちゃ重いし……」
 
「さっきの警報の鳴り方、ただのデータやない気ぃするよな」
 
「……もしかして、爆弾とかちゃうやろな」
 
「やめろや。そういうのは考えたら負けや」
 
ゴトン、とエレベーターが停止した。
 
「地下……5階……?」
 
ドアがギィィ……とゆっくり開く。
 
そこは、異様に静かで暗いフロアだった。空気が重く、どこか生ぬるい。
 
「なんか……実験施設みたいやな」
 
「ここ、一般の社員立ち入り禁止ってレベルちゃうぞ」
 
二人はそろりとエレベーターから出た。
 
壁沿いに並ぶコンソール、ガラス越しに見える冷凍保存された謎の装置。そして巨大なサーバールーム。
 
「まさかこの会社、ほんまに軍事研究やっとるんちゃうやろな」
 
「うわっ、見てみぃ大竹。『Project: Prometheus』って書いてある」
 
「絶対ロクなもんちゃうでそれ」
 
その時、
 
「カタ……カタタ……」
 
低く、機械のようなノイズ混じりの音が鳴った。
 
「おい、今の聞こえたか?」
 
「聞こえた。聞こえたけど、聞こえたくなかった」
 
音のした方へ振り向くと、ガラスの向こう側に、何かが立っていた。
 
ヒトのようで、ヒトでない。 身長は2メートルを超えており、全身を銀色の外装で覆われている。 顔の部分には目らしき赤い光が左右に動いていた。
 
「うわああああ!! また出たあ!!」
 
「てか今度のロボ、さっきのよりでかないか?」
 
その瞬間、警報が再び鳴り響いた。
 
【侵入者確認。封鎖モード、起動します】
 
ガシャン! ガシャン!
 
通ってきたエレベーターの扉が、重々しい音を立てて完全にロックされた。
 
「出られへん!」
 
「くっそ……ほんまに袋のネズミや……」
 
ロボットがゆっくりと動き出す。
 
「なあ片山、このまま終わるんか、俺ら」
 
「アホか!おっさんはな、しぶといんや!」
 
片山はアタッシュケースをぐっと握りしめた。
 
「こいつがなんなのかは分からへんけど、ここまで来て手放すわけにはいかへんねや!」
 
「せやな……最後までやったろやないか!」
 
二人は背中合わせに立ち、迫り来るロボットに向き合う。
 
「おっさんポッシブル、第二章や!!」
(続く)

ーーーーーーーーーーーー 
喜劇団R・プロジェクト6月公演
『ミッション:おっさんポッシブル 〜VS覆面ブラザーズ〜』
公演ではこの物語がどう展開するのか!?
公式LINE友だち追加で最新情報をGET!

友だち追加はこちら