『ミッション:おっさんポッシブル』第9話

おっさん、逃げ場なし!?

 

金庫室から飛び出した片山と大竹は、息を切らしながら非常階段を駆け上がっていた。

 

「こっちや! 非常口はこの先にあるはずや!」

 

「はず、て! お前、ちゃんと調べてきたんやろな!?」

 

「たぶん! ……いや、きっと!」

 

「全然信用ならん!」

 

背後からは警備員たちの足音が迫ってくる。

 

「止まれーっ!! 侵入者やー!!」

 

「うわー、これ撃たれるやつや!」

 

二人はなんとか地下3階の非常口にたどり着き、扉を押し開けた。
だが、そこにあったのは――

 

「……工事中?」

 

「なんでやねん!」

 

目の前には足場と鉄パイプ、そして封鎖された扉。

 

「どうする?どうする? 大竹、お前スパイ映画とかでこういう時どないするか知ってるやろ?」

 

「知らんし。 そもそも俺らスパイちゃうし」

 

片山はアタッシュケースを抱えたまま、くるりと踵を返した。

 

「もう戻るしかない。 逆走や!」

 

「また走るんかい!」

 

その瞬間、階段の上から警備員が現れた。

 

「発見! そこまでや!」

 

「やばい! 上も塞がれた!」

 

「なら下や!」

 

「え、下? 地下4階って書いてんで」

 

「行ったことない場所にはチャンスがある」

 

「なんの理論やねん」

 

強引に階段を下りる二人。
その先にあるのは未知のフロア――地下4階。通常社員は立ち入り禁止となっているエリアだ。

 

「おい……ここ、やけに静かやな」

 

「なあ大竹……なんか変な音聞こえへんか?」

 

「……ウィーン……カシャン……」

重機械のような音と共に、廊下の奥から何かが近づいてくる。

 

「まさか……」

 

姿を現したのは、全身がメタリックに光る人型のセキュリティロボットだった。

 

「うわあああああ!!!」

 

「なんでロボがおんねん!これ探偵の領分ちゃうやろ!」

 

ロボットが片手を上げると、指先からレーザーが発射された。

 

「よけろー!」

 

床に転がりながら、片山が叫ぶ。

 

「これ、ほんまに300万で割に合うミッションか?」

 

「いや……もう金やなくて意地や」

 

二人はロボットの攻撃をかい潜りながら、地下4階の奥へと逃げていく。

 

薄暗い廊下の突き当たり、古びたエレベーターの扉が見えた。

 

「アレしかない」

 

「動くか分からへんぞ」

 

「押すしかない」

 

ボタンを連打する片山。

 

……ギギィィィィィ……

 

扉が開きかけた瞬間、ロボットが目の前に迫る。

 

「今や! 大竹!」

 

二人はほぼ同時に飛び込んだ。

 

エレベーターの扉がギリギリのタイミングで閉まり、ロボットのレーザーがその外壁をかすめた。

 

「……セーフ!」

 

「……まだ、生きとる……」

 

二人はエレベーターの中でへたり込み、深く息を吐いた。

 

だが、

 

「なあ片山……このエレベーター、どこに行くんや……?」

 

「……知らん」

 

「おい!」

(続く)

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喜劇団R・プロジェクト6月公演
『ミッション:おっさんポッシブル 〜VS覆面ブラザーズ〜』
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