『ミッション:おっさんポッシブル』第5話

「ほ、ほんまにやるんか……?」

 
大竹はビルの影に身を潜めながら、深いため息をついた。
目の前にはオルフェウス・テクノロジー社の巨大な本社ビル。
最新鋭のセキュリティが施された“要塞”のような建物だ。
 
「ビビるな大竹。もう後には引かれへんぞ」
 
片山は警備員の制服をピシッと整え、胸を張った。
まるで本物の警備員のように堂々としているが、よく見ると胸元の名札には “カタヤマ ヒロキ” と思いっきり本名が書かれている。
 
「おい、お前……なんで名札そのままやねん」
 
「えっ!?バレへんやろ、これぐらい」
 
「いや、バレるに決まってるやん」
 
「大丈夫やって。それよりお前の方が問題やろ」
 
片山は大竹の方を指差した。
確かに、大竹の制服はズボンが微妙に短く、裾からくるぶしがチラチラ見えている。
 
「……なんか、サイズ合ってへん気がする」
 
「そらそやろ、古着屋で適当に買ったもんやし」
 
「お前、知り合いのコスプレマニアに頼むんちゃうかったんか?」
 
「…予算オーバーやった」
 
「ほんまに大丈夫なんか?この作戦……」
 
不安しかない状況のまま、二人はエントランスへ向かった。
 
ーーー 
 
潜入開始! 
 

「よし、自然に振る舞えよ」
 

片山は胸を張り、警備員らしく歩きながら、正面入り口のゲートへ向かった。  

 

ビルのロビーには、正規の警備員が二人ほど巡回している。 
 

「おい、普通に入れるんか?」 
 

大竹が小声で尋ねると、片山はニヤリと笑った。 
 

「大丈夫。事前に調べてあんねん。この時間帯は夜勤交代のタイミングや」 
 

「だからって、こんな適当な変装で通れるんか?」 
 

「まあ見とけって」 
 

片山はそのまま堂々とゲートを通過しようとした。 
 

ピンポーン! 
  

突然ゲートが赤く光った。 

 

「え?え?え?なんや?」 
 

「お客様、IDカードをお願いします」 

 

受付の女性が笑顔で声をかけてきた。 
 

「IDカード?」 
 

片山の顔が一瞬で固まる。 

 

「おい、IDカードのことなんか聞いてへんぞ」 
 

大竹が小声でツッコむが、片山は無理やり笑顔を作る。 
 

「え、えーっと……実は、IDカードを忘れてしまって……」 

 

「そうですか。では、お名前と所属をお願いします」 

 

「んーっ、と……」 

 

片山は焦ったが、すぐにホワイトボードに書いた内容を思い出した。 
 

「**オルフェウス警備チーム、第3分隊の……カタヤマ・ヒロキです」 

 

「…本名やんけ!」 

 

大竹が心の中で叫ぶ。 

 

受付の女性は一瞬、不審そうな顔をしたが、すぐにPCで何かを調べ始めた。 
 

「カタヤマさんですね……すみません、名簿には載っていませんが?」 

 

「え?」 
 

「え?」 
 

二人の間に気まずい沈黙が流れた。 

 

「ちょっとお待ちください。確認いたしますので、こちらで待機を――」 

 

「逃げろ大竹!」 
 

片山は叫ぶと、いきなりダッシュした。 
 

「うわっ!マジかおい!」 

 

大竹も仕方なく後を追い、二人はそのままロビーの奥へと駆け出した。 

 

ーーー
 

緊急プランB発動! 
 

「待てーっ!」 
 

警備員たちが一斉に動き出す。 
 

「アホかお前、計画めちゃくちゃやんけ」 

 

「しゃーないやろ、バレたら終わりや!」 
 

「もうバレとるわ!」 

 

二人はビルの奥へと走りながら、非常階段を目指した。 
 

「このまま地下3階に突入や」 
 

「ほんまにいけるんか?」 

 

「俺を信じろ大竹。俺らはおっさんポッシブルや」 

 

「何を言うとんねん」 
 

果たして二人は、無事にミッションを遂行できるのか――!?
(続く)
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喜劇団R・プロジェクト6月公演
『ミッション:おっさんポッシブル 〜VS覆面ブラザーズ〜』
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