作戦会議開始!
「ほんまにやるんか?」
大竹浩司は、スポーツ新聞を折りたたみ、深いため息をついた。
目の前では片山弘樹がホワイトボードに大きく「300万」と書き、満面の笑みを浮かべている。
「考えてみろ大竹。成功すれば俺たちは一気に金持ちや!スナックでボトルキープし放題!」
「失敗したら?」
「まあそんときは……まあなんとかなるやろ」
「その“なんとか”が一番怖いねん!」
大竹は頭を抱えた。そもそも彼らは探偵であって、犯罪者ではない。
ペット探しと浮気調査ばかりの探偵事務所が、いきなり大企業の金庫破りに挑むなんて、どう考えても無謀だ。
しかし、目の前の片山はすでにノリノリだった。
「先ず、ターゲットはオルフェウス・テクノロジー社。本社ビルの地下3階にある金庫からUSBメモリを回収する」
「はいはい、そんなんメールに書いてあったな」
「問題は警備や。セキュリティは最高レベル。指紋認証、暗証コード、監視カメラ、警備員……盛りだくさんや!」
片山はホワイトボードに「警備の問題点」と書き、さらに項目を追加していった。
1. 指紋認証 → どうやって突破する?
2. 暗証コード → 社長室にヒント?
3. 監視カメラ → どう誤魔化す?
4. 夜間警備員(2名) → 戦う? 隠れる?
「……これ、無理ゲーやないか?」
大竹は頭をかきながら、片山をじっと見つめた。
「お前…本気でやるつもり?」
「当たり前やろ!300万やぞ」
「いや、そんな簡単に言うけどさ…」
「いいか大竹。俺たちの探偵事務所、経営難やろ?」
「それはまあ、認める」
「このままやと、俺ら来月の家賃も払われへんねんで」
「そやなあ」
「しかもお前の財布の中身、今いくらや?」
「……580円」
「な?」
片山はニヤリと笑い、ホワイトボードをバンッと叩いた。
「やるしかないねん!」
大竹は大きくため息をついた。正直無謀すぎるミッションだ。しかし目の前の現実も厳しい。
「……作戦があるなら聞こか」
「ああ」
片山は得意げに指を鳴らし、ホワイトボードの前に立った。
「作戦名:おっさんポッシブル・オペレーション!」
「なんやそのネーミングセンス」
「先ずは潜入方法や」
片山はボードに大きく「潜入方法:変装」と書いた。
「俺ら警備員に変装する」
「えっ、そんなん簡単にバレるで」
「そこは大丈夫や。知り合いのコスプレマニアに頼んで、本物そっくりの制服を用意する」
「何でそんなコネあんねん」
「次に指紋認証や」
片山はボードに「指紋対策:複製」と書き、得意げに続けた。
「社長の指紋を手に入れればいい」
「どうやって?」
「社長がよく行くカフェで、使ったコーヒーカップをゲットする」
「ストーカーやん」
「 探偵や」
「うさんくささは紙一重やな…」
「で、暗証コードや」
片山はボードに「暗証コード:社長室」と書き、続けた。
「メールには“ヒントが社長室にある”って書いてた。だから俺が社長室に潜入して探る」
「お前、そんな簡単に入れる思うてんの?」
「大丈夫や。俺、社長秘書のSNSフォローしてるから動向はバッチリやねん」
「なんでそんなコネあんねん…(二回目)」
「で、最後にカメラ対策!」
片山はボードに「カメラ対策:ハッキング」と書いた。
「……ハッキング?」
「知り合いの天才ハッカーに頼む」
「お前ほんまかあ?ほんまにそんな知り合いおるんかあ?」
「おる!」
「……嘘やろ」
「まぁちょっと、怪しい奴やけど、腕は確かや」
「そうなん…」
「よし大竹! これで作戦は完璧や」
片山は満面の笑みを浮かべ、拳を握りしめた。
「いよいよ俺たちの“ミッション”が始まる」
「……ほんま大丈夫なんか?」
「任せろ!」
こうしておっさん二人の無謀なミッションが動き出すこととなった――。
(続く)
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喜劇団R・プロジェクト6月公演
『ミッション:おっさんポッシブル 〜VS覆面ブラザーズ〜』
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