連載小説『殺し屋のるーる』③

3月公演『殺し屋のるーる』の戯曲を小説風にしてみました。もうこれはほぼほぼネタバレです(笑)

どうぞお楽しみください。 
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【登場人物】
チヒロ(私生活ではニートだが裏の顔は殺し屋 殺し屋協会所属)  
 
サエキ(殺しの依頼人 殺し屋協会所属) 
 
エモト(殺しのターゲット 殺し屋協会京都支部所属) 
 
キノッピー(チヒロのニート仲間 ゲーム好きのニート) 
 
タケポン(チヒロのニート仲間 夢追い型ニート) 
 
伊澤ゆうり(伊澤姉妹の姉 フリーの殺し屋 妹と共にチヒロに戦いを挑むがことごとく返り討ちに遭う) 
 
伊澤まこと(伊澤姉妹の妹 フリーの殺し屋 姉と共にチヒロに戦いを挑むがことごとく返り討ちに遭う) 
 
サエコ(コンビニの店員 コンビニではチヒロの先輩 年下なのにチヒロに先輩風を吹かせる小生意気なイマドキ女子高生) 
 
チ カ (サエコの友達) 
 
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《前回からの続き》 
 
夜も更け、二人が騒ぎ疲れて寝息を立てる頃、うちは部屋の隅に座り込み、ぼんやりと窓の外を眺めていた。暗闇の向こうに広がる街の光は、うちにとってはただの景色でしかない。 
 
コンコン。 
 
玄関のドアを叩く音がした。うちは面倒そうに立ち上がり、そっと覗き穴から外を見る。そこには見慣れた顔、サエキが立っていた。 
 
「なんや、こんな時間に」 
 
ドアを開けると、サエキは部屋にズカズカと上がり込んできた。 
 
「お前、殺し屋やのに警戒心なさすぎやな」 
 
「女子の部屋に勝手に上がり込む方が警戒心ないわ。」 
 
うちはそう言いながらも、サエキの顔色を窺った。彼がここに来るということは、仕事の話に違いない。 
 
「依頼や」 
 
予想通りだった。 
 
「ターゲットは?」 
 
「同業者や」 
 
その言葉に、うちの手が自然と拳を作った。同業者――つまり、うちと同じ殺し屋を狙えということだ。 
 
「殺し屋協会の人間や。名前はエモト。京都支部の所属やけど、ルールを破ったらしい」 
 
「ルールを?」 
 
「ターゲットに情をかけて逃がした。それだけやなく、任務は完了したと嘘までついて報告したんや」 
 
殺し屋の世界では、ターゲットに情をかけることは厳禁だ。それがバレたら、その殺し屋自身が次のターゲットになる。それがルールだ。 
 
「情をかける……情を、か…」 
 
うちはその言葉を繰り返しながら、胸の奥にある何かがざわつくのを感じた。
(続く)

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